1962年東京都大田区、田園調布に生まれる。
母方の祖父、大津陽信は水戸出身の彫金家で、水戸の彫金を代表する海野勝珉の弟子にあたる石川勝信に師事した、いわゆる水戸金工の流れを汲む彫金作家だった。 祖父の大津陽信から深い影響を受け、画家になることを陽信に勧められた子供時代から絵をよく描いて過ごした。 この時代が絵画に対しての原風景だった。
20代になると、絵を学ぶ中で絵画の修復という職業に出会うこととなる。 芝美術研究所の恩師、笹口恵美子氏の強い薦めにより、修復家、岩井希久子氏の紹介を受け、東京中野の小谷野匡子氏が主宰する絵画保存研究所に入すすることとなり、修復技術の習得のための長い修行が始まった。 その後、武蔵野美術大学さらに和光大学の卒業を経て、東京藝術大学大学院に入学し、坂本一道教授の研究室にて西洋の伝統的な絵画技法の研究を修める。
そして大学院修了後、画家、荻太郎氏の推薦を受け、文化庁在外派遣研修により渡米し、ニューヨークの修復スタジオRustin Levenson Art Conservation Associates(現 Art Care Coservation)へインターンとして所属し、当時のディレクターHarriet Irgang氏のもと、ニューヨークのアートシーンの中で、現代絵画の研究をはじめ、さまざまな修復実務の経験を養った。スタジオでの実務と、ニューヨーク市の施設内での作業にも従事し、ハーレム地区ではStudio Museum in Harlemにおいて黒人の文化芸術を学び、修復作業に従事する機会を得た。
同じくハーレムにある歴史的な劇場、Heckscher Theatre内の壁画の修復事業にも参加した。ニューヨークでの経験はその後の人生に大きく影響し、帰国後から始まる作品の発表活動や事業の礎となった。
帰国後、絵画制作と個展を軸とした発表活動を開始し、日本庭園、茶庭などから得る自然観やインスピレーションをもとに、ミニマルで抽象的な絵画の制作を続けた。 古来の襖絵や屏風、軸などに代わる極めて簡略化されたもの、尾形自身の持つ庭の「印象」をミニマルに表現し、現代の和をテーマにした「古美の彩」を追求した。 「部屋に庭を飾る」という制作のテーマは「人の住まう空間」いわゆるパブリックアートへの制作などにも注力するきっかけともなり、レジデンスやホテル、病院などのへのコミッションワークなど、さまざまなアートワークを手がけてきた。
日本国内と同時に、ニューヨーク、ロンドンなどのセレクト展にも参加し、2015年にはロンドンのギャラリーが主催した”Griffin Gallery Open” においてWinsor & Newton Painting Prizeのファイナリストに選出された。また東南アジア・シンガポールなどへ活動の場を広げ、2019年にはベトナムのハノイで開催された、アジア圏各国の作家を一堂に会し、その作品を展示したベトナム政府主催の「The Exhibition of Finest Art Works From Representative Asian Artist inHanoi - Vietnam 2019 」において唯一の日本人作家として招聘された。
さらに、米国より帰国後、作品制作や発表活動と同時に、ニューヨークで過ごした修復スタジオをモデルに、都内港区で修復工房Tokyo Conservationを立ち上げた。 美術館や博物館、公共施設や企業美術、さらにギャラリーから個人コレクターまで、さまざまな絵画修復の案件をユニークなスタッフと共に取り組んでいる。 近年では天候不順が原因とされる災害による被災絵画の修復にも注力している。 さらに先の第二次世界大戦時の戦争画の修復をも手がけ、民間に眠る戦時下の記録絵画なども調査し修復を続けている。